指圧治療家にビジネス感がいかに大事か

「指圧治療家にビジネス感がいかに大事か」

・手技が出来れば仕事は付いてくる?

私自身が初めにそういう考え方の先生に従事した影響で長い間「技術さえ上げれば優れた治療家になれる」と信じていました。
実際そういう先生が目の前に居るのですから疑う余地はありませんでした。
師匠は特に宣伝らしき事をするわけでもなく、看板はあるけれど実に素っ気ない物で集客する気はゼロ。それでも患者さんは予約でいっぱいなのですから流石と思っていました。
自分もいつかはこの何分の一かにでもなりたいと思ったものです。
でも、このカッコよさへの憧れみたいなものが、自分の開業においては見えない足カセになっていたことには長い間気が付きませんでした。

・口コミだけで経営が成り立っている治療院もあるけれど。

確かに、口コミだけでやりきれないほど仕事をしている治療家もいます。しかしその技術はちょっと真似してできるというレベルじゃありません。そういう治療家には巡り会って技術を教わるチャンスがあったとしても経営センスまではなかなか習得できるものではありません。

・治療院開業は敷居が低い?ローコストで開業できるけど経営意識も低い?

治療技術や解剖学は沢山勉強されて来たと思いますが、それと同じ位ビジネスの勉強をしてきたでしょうか?
例えば、チラシ一枚作るとしましょう。写真やキャッチコピー、文言、色やフォント、レイアウト等。
いろいろ大変。どう作って、どう配るかなど。苦労して作っても集客率は微々たるものだったりして。
かつては指圧の看板を出せば患者が入ってくるという時代もあったみたいだけれど、残念ながら昔話となってしまいました。

・金銭感覚はみんな違う自分の感覚がスタンダードではない。

1回10,000円・30分6,000円は高い?
高く感じる人もいれば安く感じる人もいるでしょう。中には「そんなのは暴利だ」と言う先生もいます。
全く様々です。
定価があるわけではないのですから自分で決めればよいのですが悩ましい問題でもあるのです。
自分で自分に投資して自分で働いて自分が利益を受け取る。
そして得られた利益で勉強したりリフレッシュしたり後輩を育てたり社会貢献したりする。
ビジョンを持って開業しようと思えば価格設定なども自ずと適正なものになってくるのではないかと思います。

・従業員とオーナー院長

オーナー院長は大変?
最近はブラック企業ばかりで勤めて働くのも大変ですが、会社員(正社員)と自営業では社会的な認識のされ方が大きく違ってきます。
生涯収入、年金や保険、福利厚生などに大きな差があります。
特に脱サラをして開業を考えている人には十分リスクを考慮する必要があります。
もし将来、ローンを組んで家を買いたいと思っても銀行に相手にされないかもなんてことになるかも。

蛇足ですが。自営業になると、なるべく税金は払いたくないと思うのだけれど社会的な信用を得るためにはある程度の納税をしておいた方が良いです。
自営業をやってると「昨年の申告書見せて」ってことが結構あります。
第三者から見ると売り上げが少ない人は「残念な人」に見られてしまうかも。
でも高額納税者になっても勲章貰えるわけではないですけどね。

・何でも自分でやらなきゃいけない院長先生だけど

苦手な仕事は人に頼んで前に進む。
会計が得意でなければ経理や申告は税理士さんに頼むのもありです。
仕入れや機械設備があるわけではですから一人治療院であれば申告はさほど難しいものではありませんが、それでも全くの門外漢だったりすると面倒に感じるでしょう。また、絵が苦手な人にイラスト入りのチラシを作れと言っても無理ですし、文章作りが苦手人に人を引き付ける文章を書きましょうと言っても難しいものです。
また、新規集客をしようと思えばWeb集客が大きなウェイトを占めます。
時間とお金を掛けて技術を習得してきた身としては新たにそんな所にまた手間暇かかるのかと思う所ですが、いかにゴットハンドといえども世間に周知されなければビジネスチャンスはありません。
もしあなたが歯科医で開業するとなれば歯科開業コンサルタントに店舗の立地から設備スタッフ集め、資金繰り等いろいろ頼むことでしょう
我々指圧治療院の開業はローコストで行う場合が殆どでしょうから、コンサル丸投げということは無いですが身近な先輩の成功例だけをちょっと参考にして勝負していくのはリスクが高いと思います。
開業はしたものの思っていたイメージと全然違うと落胆する事にもなりかねません。

・指圧を一から学んだように経営もまた学んで行く必要があります。

残念ながら学校ではそう言う事はカリキュラムに入っていませんし教えてくれる場所ではないですから自分で学びの場を見つけて学んでいくしかありません。

せっかく学んだ優れた指圧の技術や知識を活かして社会に貢献できるようにするには、経営に関する知識や実践の仕方をしっかり学ぶことが必要だと思います。

日本指圧学会 副会長
日本統合指圧協会 顧問
いのうえ指圧 院長
指圧師 井上寿男